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時として知識は邪魔をする 万年筆編

こんばんは、バリカンの万年筆担当ナカガワです。

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今年の夏頃から万年筆がマイ・ブレイク中。

仕事で使うペンといえばかなりの方がフリクションペンを使っているのではないでしょうか。
かくいう僕もそうでした。なんて画期的な筆記用具が出たものだ。
消すことができる筆記具はこれまで鉛筆かシャーペンなどでした。
その勢力が一気に塗り替えられたのは説明する必要もないぐらいのヒット商品です。

あぁすごい便利。そう思って使ってましたがやめました。
インクのノリが薄いのと、そうそう消す回数も多いわけじゃないなというのが理由。

消すことができる、その一点においてフリクションペンは実力を発揮するのだけど、書くことに関しては実力はまだまだ。
消す回数より書く回数のほうが断然多いわけです。ならば書く心地よさを重視したほうが良いではないか、良いではないか、あ~れ~。というのが今のところの結論。

そこで万年筆です。

試しにと思いプラチナの1000円のカートリッジ式万年筆を使ってたのだけど、書き心地がものすごく良い。用もないのに書きたくなる。

筆圧に応じてある程度太さが変わるし、ゆっくりでも殴り書きでもインクの出があまり変わらない。
万年筆の欠点である乾燥にも対応していて数日使ってなくてもいきなり書き始めることができる。そしてなにより良いのが、インクが”スパッ”と切れること。

例えば、フェルトペンは書き心地はいいのだけど、終わりがよくわからない。
気軽な万年筆として売り出しているプラマンもそうでした。

かすれてきたな、まだいけるかな、もう終わりなのかな?そうだましだまし付き合っていく感じ。それに対し、こちとらスパッと切れる。「終了です」がわかりやすい。いさぎよい文具だ。

これはなかなかおもしろい文具だぞ、とお試し期間を過ごしました。

さあ、次は本当の万年筆だ。

いろいろと調べたら同じプラチナが#3776というペン先を作っているという。
3776というと富士山の標高だ。
山好きとしては放っておけない。もちろんその富士山を意識して名付けられている。
からには日本製。そういうストーリーは好きだ。応援したい。

山の名前がそのままブランド名になっているモンブランが第一候補に上がっていたのだが、そこは日本人。メイド・イン・ジャパンでいこうじゃないか。モンブランのキャップ先につけられた雪模様はかなり魅力的だが、そこは次にとっておこう。

さらに調べてみると、プラチナの#3776の中には、キャップの構造を見直すことで万年筆の弱点、”乾燥”を克服したシリーズがあるというではないか。
これだ!と喜びいさんで大手文具屋へ行ったわけです。

「乾燥に強いプラチナの万年筆ってどれですか?」

30すぎたぐらいの若いけどやりて風なビシッとしたスーツを身にまとった店員さんはとくとくと説明し始めました。
「そういうのは残念ながらないのです。万年筆の構造上乾燥を防ぐのはかなり難しい、むしろそれが万年筆の特徴でもあり、なぜかというとインクの材料はこういうもので、、、、」

とくとくと万年筆がなぜ乾いてしまう構造なのかを教えてくれました。

あまりに自信たっぷりに説明されるものだから、あら、僕が見た情報は発売予告だったのか?とすら疑いました。

「キャップの先にバネを仕掛けることで乾燥を防げる仕組みを作ったって記事を読んだのですが」
そう告げると、店員さんは隣の女性スタッフに「バネの入ったキャップって?知ってる?」と訪ねてくれました。

「! それでしたら、こちらのシリーズになります!!」
そうして無事僕は希望の万年筆を手に入れることができました。でかした女性スタッフ。

そうとう新しいシリーズだったのかなぁ、店員さんには恥かかせちゃったなあと思い、あらためて調べてみると2011年発売でした。

残念だなあと思うと同時に、そうしてお施主さんに言ってしまっていることがないだろうかと思いました。

自分が知っている知識は少なくとも昨日更新されたものばかりではない。
自分の知っている知識がすべてではないことを前提にお話できているか、そんなことを思いました。時として知識は邪魔をする。そのことを肝に銘じておこう、そう思った休日でした。


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